何だかアカツキとは思えないほどか細く弱々しすぎる声だった。
あまりにも普段とのギャップが……。
本当にこれはアカツキの口から出た言葉なのか?
思わず疑ってしまう。
たとえ寝言だとしても違和感を感じてしまう。
再び椅子に腰を下ろす。
眠っているアカツキの口からまた違う言葉が漏れた。
「……母さん」
確かにそう呼んだ。
――母さん?
ふと考える。
「母さん」って呼んだってことは母親の夢を見ているのか?
でもアカツキの母さんって……。
そのことに思い当たり、はっとアカツキの方を見た。
「――行かないで」
アカツキは子供のような声でぼそりと呟いた。
「……アカツキ」
胸が波打つのを感じる。
……何で…。
…何でそんなことを言うんだ。アカツキ。
どうしてそんなに”らしくない”声を出すんだ。
調子が狂ってしまうじゃないか。
投げ出されているアカツキの手がヒクリと動いた。
「――行かないで」
また同じ言葉を繰り返す。
過去の夢でも見ているんだろうか。
それがどんなものかは俺には分からない。それが酷くもどかしい。
知っているのはアカツキの母さんはもう居ないという事実だけ。
何故だか胸が苦しくなって、たまらない気持ちになっていた。
「――行かないから」
……ここに居るから。
するりと言葉が滑り落ちる。
気づけば自然とアカツキのその手に手を重ね、握っていた。

