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その後、意識の無いアカツキを背負い、ひいこらとやって来た先は保健室。
保健室の扉には【営業中】の札が掛かっていた。
にも関わらず、その室内には誰も居なかった。
保険医と名乗るあの人の姿もない。
どさっと背負っていた荷物をベッドの上に寝かせる。
「ふう……」
疲労困憊で傍の簡易椅子に腰を下ろした。
気を失っている人間を運ぶのはかなりの重労働だ。
しかも右手首がじくじくと痛みを訴え、うまく使えない。
ようやく自分のことをかえりみ、痛みの根源を見てみた。
見た目にも痛々しく、紫色に腫れ上がっていた。
「捻挫か…」
脈打つごとにめちゃくちゃ痛い。こりゃしばらく使えそうに無いな。
一応手当てだけでもしておくかと思い、立ち上がる。
「――待て」
その隣から声が掛かった。
「え?」
何だ何だ誰なんだ?と思いながら、辺りを見回す。
当たり前のように誰も居ない。
…幻聴か。疲れてんのかな。
「――待って」
今度ははっきり近くで聞こえた。
ふと視線を下にずらす。
そこには未だ眠ったままのアカツキの顔。
もしかして…
「……寝言?」
その寝顔を見つめる。
普段は威嚇するように険しいその顔も、寝ている時ばかりは力無く緩んで、何て云うかその…ほんのちょびっと可愛かったりしないようなするような。
「……なわけないよな」
思いかけて、ふいと慌てて視線をそらした。

