吹き飛んだ敵を見送り、その場に立ち尽くす。
巻き起こった風の名残が頬を撫でる。
視線を落とした。
呆然と驚きながら自分の足を見つめる、
どうしてあんな蹴りを放てたのか、自分でもよく分からない。
「ふっ。さすがだな」
その声に顔を上げる。
男は膝をついて起き上がり、こちらを見ていた。
蹴りは相手を捉えたかのように見えたが、手応えがまるでなかった。
相手はきっちり蹴りを避けていたのだ。風の余波を受けて吹き飛んだだけだった。
「それでこそ風鬼の力を継ぐもの…」
感心するように呟く声。
「……ふうき?」
「自覚無しでその力を使っているのか……まぁよい」
男は立ち上がり、杖を構える。
「倒すべきことに変わりは無い」
何事も無かったかのように落ち着き払った声音で、戦いの再開を告げる。
こちらも再び身構える。
さっきと同じ策は使えない。新たな策など見つからない。
それでも退けない。
互いの「譲れない」という視線がぶつかり合う。
空気がピリリと張り詰める。
緊張が最高潮に高まる。
そこへ――、
「――はいはい。そぉこまでや~」
パンパンと手の叩く音。
突然割って入った間の抜けた声にその場の緊張が解けた。
「……蓮」
「……お前っ」
同時に声がした方を見て、驚嘆した。
しまりのない笑みを浮かべた関西弁の馬鹿がそこに立っていた。

