意識の全てを目の前の相手へとそそぐ。
身体の痛みは忘れる。
ただ目の前の敵を倒すことだけに集中する。
男は錫杖を緩く握り、斜めに倒して構えていた。
一見無防備そうに見えるが、どんな攻撃も仕掛けることが出来、どんな攻撃にも対応できるように隙が無い。
じりじりと足を動かし、重心を移動させている。
どうやらこちらの出方を窺っているようだ。
だったらこちらから仕掛けるしかない。
息を一度、吸って吐く。
意を決して走り出し、相手の間合いへと飛び込んだ。
自殺行為かもしれない。
それでもこっちが武器を持っていない以上、相手が攻撃できないぐらいに接近するしかすべがない。杖のリーチの長さを逆手にとって。
しかし、接近するにはそれまでに相手の攻撃をかわし続けなければいけない。
その腕の動き、流れに目を凝らす。
左。突きだ。
右へとかわす。その肩すれすれを杖が通り過ぎる。突きと同様に戻すのも速い。
攻撃と攻撃の間の動きに一切の無駄が無い。洗練された動きだ。
でも何故だか、その攻撃の流れが手に取るように読むことが出来た。

