ひひゅんと空を切る音がした。
宙で半回転した杖は再び男の手に戻る。
その一瞬にして間合いを目測し、杖を短く持ち替えていた。
次に決定的一打を繰り出すつもりだ。
俺は既に駆け出していた。
ごぉっと唸りとともに男は杖を突き出す。
ほぼ同時に、俺はアカツキの前に躍り出た。
(……させない)
アカツキを突き飛ばし、突き出された石突きを素手で受け止める。
衝撃が手の平を貫き、ぐきりと手首が鳴った。
「…くっ」
相手がアカツキだったから手加減してあったが、それでも相手の戦意を削ぐほどの威力がある。
何とか踏み止まれたけど、後退せざるをえない。
男は素早く杖を戻し、今度は高々と振りかぶり斜めに振り下ろしてきた。
攻撃の転換が速すぎる。長い得物を操っているようには思えない。
とっさに身をよじったが間に合わなかった。
脇腹に打撃が掠め過ぎていった。臓腑がひっくり返るような衝撃があった。
「うぐっ」
今度ばかりは堪えきれず、背から地面に転がった。
何とか直撃はまぬがれたけど、酷い痛みが意識をさいなむ。立ち上がれない。
「シュン!!」
アカツキが駆け寄ってくる。
「……ぅ…」
大丈夫だ、と言おうとして声にならなかった。
「無様だな」
前方からの冷ややかな声。
「己の身も守れずに何が守り手か」
見上げると冷笑を浮かべる男が居た。ぞっとする笑みだった。
「矮小で愚かしく滑稽だ。貴様は何も守れない」
言いながら男は転がる俺のほうに歩み寄ってくる。
俺はその相手を睨み上げることしかできない。動けない体が忌々しい。
近づく男の前にアカツキが立ちはだかった。
「てめっ」
怒りに滾った声。
やめろ。
制止の声をあげる間もなくアカツキは動いていた。
フェイントも何も無いストレートを繰り出す。怒りに任せて真っ直ぐに伸びる。
男はそれを見切り、横に避けながらアカツキの腕を掴んだ。
「なっ」
驚きに動きを止めるその首筋に手刀を振り下ろす。
それはあまりに一瞬の出来事で。
アカツキは声も無くその場に崩れ落ちた。

