Fortunate Link―ツキの守り手―



男は草むらに身を潜める虎のように、静かに身構え臨戦態勢に入っていた。

いつでもどこからでも仕掛けられるように、ぎりぎりに身体を張り詰めて均衡を保っている。

その均衡を破れば、爆発的な力を発揮させるに違いない。



……まずいな、と思った。

つい言われた事に熱くなって相手を焚きつける形となってしまった。

相手は間違いなく手強い。
戦わずともそれぐらい推し量ることが出来る。放つ雰囲気が百戦錬磨の猛者のように磨きぬかれている。

正直、今、この状況で戦いたくない。

こっちは女の格好のままで、普段ならともかく今は何の武器も仕込んでいないし。

要するにこちらに分が悪すぎる…。


「…どうした。逃げ腰になっているようだが」

男は構えを解かないまま、声を掛けてきた。


ぎくりと動揺が走る。
何ということだ。俺は別段動いていないというのに。心が読まれた。


「……戦う気は無いか」

俺の様子を見て、男は溜息をついて首を振る。


そうです。戦う気は無いんです。だからこのまま退いてくれ。

祈るように男の挙動を見守る。


しかし……、

「ならばこうさせて貰う」

奴はその錫杖をアカツキに向けた。

「…なっ!……待てっ!!」

アカツキに何をするつもりだ。

「待たぬ。どうやらお前は守る対象が無ければ力を発揮せぬようだからな」

「……何だ?」

当のアカツキは状況をよく理解していないようで、錫杖を向けてきた男に「やんのかコラ」的な視線を送っていた。

「アカツキ」

待て。挑発するな。そいつはお前のかなうような相手じゃない。


「……行くぞ」

男は構わず錫杖を真っ直ぐに振るった。