『存在を否定』だと。
人道にもとることを泰然自若と言いきる。
やはりこの男に俺の常識は通用しなさそうだ。
「お前はその役割を辞するべきだ」
そう告げると、男は錫杖を掲げ上げた。
「そうしないと言うなら強行的手段でお前を排するまで」
冷えきった目で俺を見下ろす。
「ちょっ待てよ!訳分かんねぇよ!」
俺は我慢ならずに抗議の声を上げた。
ついでに言うと腹立たしい。
俺にとって、守り手をやめろと言われる事は自分の存在を否定されるに等しい。黙ってなどいられない。
だが相手は全くその態度を崩さない。
「分からぬか。ならばもう一度言おう。
――貴様は”ツキの守り手”であるべきではない。即刻辞せよ、守谷俊」
男の声色は終始一貫して乱れは無い。
その声が余計に神経を逆撫でる。
「………っ」
……何だ。
何なんだこいつは。
心が怒りに震えるのが自分でも分かる。とめられない。
相手が誰であろうがその言葉だけは許せない。
男を真正面から睨めつけた。
「俺は守り手だ」
断固として言い放つ。
「どこのどいつが何と言おうがこの役目は譲らないし譲れない」
男は目を細めた。
笑ったのではない。殺気を凝縮したような目だった。
「…ほぅ。逆らうか。ならば」
男は錫杖を構え、全身に気をみなぎらせた。本気だ。
「俺はお前を全力で排除する」
みなぎらせた気を鋭利に研ぎ澄まし、純粋な戦意を湛えた目で俺にそう告げた。

