Fortunate Link―ツキの守り手―



休み時間。

俺は胸に複雑な色んなものを抱えながら、1年A組に向かっていた。


あれからのサトシとのやり取りはどうだったのかというと――





「何ぃぃぃ!!」

まず俺は絶叫した。

そこが教室内だということなど完全に忘れていた。

「マジか?それ」

突っかからんばかりの勢いで、サトシに問い返す。

さすがのお気楽男も、俺のその必死な形相にたじろいでいた。

「本当だって」

詰め寄る俺を手で押し戻しながら、サトシは言った。

「俺の友達に以前、白石さんと付き合ってた奴がいたんだかな。
彼女の金銭感覚に付いていけない―って泣いて逃げてきたんだ」

神妙な顔で説明してきた。

「…嘘だ」

それでも俺は首を振った。

あんな儚さそうな彼女がそんなことある筈ない。

「まぁ気持ちは分からんでもないが、女は外見と違うもんなんだよ。
夢見てちゃダメだ、シュン」

同情するような目で見てくるサトシ。

「信じられないなら自分で確かめてみればいい
いずれ思い知ることになるさ」

まだ高校生のくせに坊さんのように悟りきった口調で、俺の肩を叩いてきたのであった…。





以上。回想終了。


事の真相を本人に確かめるべく、こうして1年A組に赴いている――と。
そう云うわけであった。

正直まだサトシの言っていたことが信じられない。

やはり本人の口から聞くまでは…。


…往生際が悪いってか?

何とでも言えばいいさ。ふん。


A組の前までやって来た俺は、開いてる扉から遠慮なく中へと押し入った。

休み時間中は基本、他クラスだろうが自由に行き来できる。
そういうフリーダムな校風はありがたかった。

さすがに他学年となると、緊張感が伴うものだろうけど。


教室内に入ると、すぐに白石さんの姿を見つけた。

皆それぞれに固まって談笑し合っている中で、
彼女だけが一人、机の上で食い入るように本を読んでいたからだ。

俺は真っ直ぐに彼女の座る机の方へと向かった。