休み時間。
俺は胸に複雑な色んなものを抱えながら、1年A組に向かっていた。
あれからのサトシとのやり取りはどうだったのかというと――
*
「何ぃぃぃ!!」
まず俺は絶叫した。
そこが教室内だということなど完全に忘れていた。
「マジか?それ」
突っかからんばかりの勢いで、サトシに問い返す。
さすがのお気楽男も、俺のその必死な形相にたじろいでいた。
「本当だって」
詰め寄る俺を手で押し戻しながら、サトシは言った。
「俺の友達に以前、白石さんと付き合ってた奴がいたんだかな。
彼女の金銭感覚に付いていけない―って泣いて逃げてきたんだ」
神妙な顔で説明してきた。
「…嘘だ」
それでも俺は首を振った。
あんな儚さそうな彼女がそんなことある筈ない。
「まぁ気持ちは分からんでもないが、女は外見と違うもんなんだよ。
夢見てちゃダメだ、シュン」
同情するような目で見てくるサトシ。
「信じられないなら自分で確かめてみればいい
いずれ思い知ることになるさ」
まだ高校生のくせに坊さんのように悟りきった口調で、俺の肩を叩いてきたのであった…。
*
以上。回想終了。
事の真相を本人に確かめるべく、こうして1年A組に赴いている――と。
そう云うわけであった。
正直まだサトシの言っていたことが信じられない。
やはり本人の口から聞くまでは…。
…往生際が悪いってか?
何とでも言えばいいさ。ふん。
A組の前までやって来た俺は、開いてる扉から遠慮なく中へと押し入った。
休み時間中は基本、他クラスだろうが自由に行き来できる。
そういうフリーダムな校風はありがたかった。
さすがに他学年となると、緊張感が伴うものだろうけど。
教室内に入ると、すぐに白石さんの姿を見つけた。
皆それぞれに固まって談笑し合っている中で、
彼女だけが一人、机の上で食い入るように本を読んでいたからだ。
俺は真っ直ぐに彼女の座る机の方へと向かった。

