「はぁはぁ……」
心の中は恐怖で埋め尽くされていた。
歯の根も合わないぐらいガチガチに震え上がっていた。
立ち止まり、飛び出しそうに心臓の跳ねている胸元を押さえて息を整える。
早く外の空気が吸いたい…。
ふと足元に白いものがあることに気づいて見下ろす。
こんもりと盛り上がっている布団がそこに有った。
こうなりゃ悪い予感しかしない。
低い呻き声が布団から漏れてきた。
「…うぅ…眠れない…眠れない…」
ブツブツと呟き声が…。
これは絶対に……来る。
「眠れないのは…」
そろりとその脇を通り抜けようとしたが――、
「お前のせいだぁぁぁっ!!!」
ガバリと跳ね起き、青白い顔の白装束の男が襲ってくる、
「ひぎぃぃぃぃぃぃっ!!」
泣きそうになりながら、猛ダッシュ。
逃げて逃げて逃げまくる。
頭の中は完全にパニック。
角から飛び出した所で現れたのは、
女性の後姿。
――カンッカンッカンッ
五寸釘を打っている女がぎろりと目を剥いてこちらを振り返り睨む。
「――憎いぃぃぃぃっっ」
木槌を振りながら凄い形相で……。
「ぎゃわぁぁぁぁぁっ!!!」
逃げた。もう泣きながら逃げた。
恐怖の臨界点を突破した。
50メートル6秒台で走破する勢いで走った。
「ぜぇぜぇ…」
もう息がままならない。脈が乱れに乱れまくっている。
はっと暗闇を見回した。
何だか急に静かになったような……。
「…あれ?アカツキは…」
思えばいつから姿を見かけていないだろうか…。
頭の中が混乱しきって、我も何も忘れきっていた。
「……おーい」
頼りない声で呼び掛けてみる。
しかし前にも後ろにも誰も居なかった。

