暗幕に覆われて光が遮られた中を、足元に貼られた蛍光色のテープだけを頼りに前へと進んだ。
2年の3クラスが合同で企画製作したものらしく、講堂内全体を使用してなかなか大掛かりなものになっているらしい。
「こ、こらっ。あんまりさくさく進むなっ」
「てめぇの方がチンタラしてんだろ」
前を進むアカツキから苛立たしげな返事が返ってくる。
「最初は慎重を期すべきなんだよ。まずはスライムとかコンニャクとかがいきなり顔面に襲ってくる可能性が大だからな!そんな先々進んでたら足元をすくわれるぞ!」
「うるせぇ。声がデカイ」
――べちゃっ!!
「ぎゃー!来た!マジで来た!」
その場から全速力で逃げ出した。
「おいコラ!さくさく進むなっつってお前がさくさく逃げてんじゃねぇか!」
アカツキが追いかけてきた。
「だっていきなり顔面に来たからっ」
「あん?私は何とも無かったぞ」
「……何でだ?!」
不公平だ。何で俺だけがこんな恐怖を味わなきゃいけな…
『――観自在菩薩行深般若波羅蜜多…』
障子を模した衝立がぼぅっと光り、その向こう側から般若心経が聞こえてくる。
「うわ。ヤバそうな空気…」
「言いながら何背中に隠れてんだ」
「…お前が先にその向こうへ行ってくれ」
「何でだよ?」
「だってアカツキが先に行けば幽霊もビビって出てこないかもしれねぇだろ」
「…どういう意味だ?」
空気が険悪になりかけたその脇から――、
――ズボッ
障子を突き破って手が伸びてきて、俺の腕を掴んだ。
血濡れの手がピトリと俺の腕を――、
「ひぎぃぃゃゃぁぁぁぁ!!!」
自分の口からこの世のものとは思えない断末魔の悲鳴が迸った。
掴んでいた手がビクリと驚いたように俺の腕を離して引っ込んだ。
「怖ー!怖ー!まじまじ怖ー!死ぬー!」
気づけば自分からアカツキの手を握り締めていた。格好悪いことこの上ないが、今の俺はそれどころじゃない。
「お前が一番怖えーよ…」
どこまでも冷静なアカツキの声がそう指摘した。

