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「あれ?
今日は月村と一緒じゃないのか?」
朝、一人きりで教室に入ってきた俺を見て、
サトシが開口一番に訊いてきた。
「昨日はたまたまだ」
そう云う事にしておく。
何となく奴とは顔を合わせづらかったので、迎えに来る前に逃げるようにして家を出てきたのだ。
ちなみにアカツキは俺の家にちゃんと迎えに来ていた。
先廻りして、彼女が無事に登校しているかを見守った。
我ながら阿呆なことをしていると思うが。
どうしても、奴のあの軽蔑するような鋭い眼差しが焼きついていて離れないのだ。
「何だ、つまんね」
サトシはむっつりと呟く。
つまらなくて結構。
何でこっちがお前を楽しませなきゃならねぇんだ。
「…何かあったのか?」
サトシは俺の前の席に勝手に腰掛けながら、問いかけてきた。
「別に」
机の端に鞄を引っ掛けながら、素っ気無く答える。
「嘘だな」
サトシは確信的に言ってくる。
そう思うなら訊いてくるな、と苛立った。
最近、コイツは俺とアカツキの事に関してやたらとしつこい。
昨日の事なんぞ口にしたら、面白がって飛びついてくるに決まっている。
…そう思いかけて、
「いや待て」と俺の中のもう一人の自分が止めた。
確かにこいつはお気楽馬鹿だが、
そのお気楽さが功を奏してか、顔が広い。
もしかして……
「なぁ、1年A組の白石さんって知ってるか?」
「あぁ知ってる。色白の小柄な子だろ?」
すぐに答えが返ってきた。

