「……なっ」
開け放たれた扉付近から、言葉を失う連中の呻きが聞こえた気がした。
唖然とした空気が室内に漂う。
しかしこの場で一番この状況に驚いているのはきっと俺だ。
呼吸する事すら忘れていた。
口に乱暴に押し付けられたその唇の感触だけが敏感に伝わってくる。
脳も一時活動停止。
驚きで見開いた目が捉えたのは、閉じられたアカツキの目蓋。長い睫毛。
自動ドアのようにピシャッと扉が閉まった。
「…なぁんだ。男が居たのかよ」
そんな声とともに遠ざかっていく足音。
そこでようやく触れ合っていた口と口が離れた。
耳には自分の心臓の音がバックンバックンと届く。
離れていくアカツキの顔を見ながら、
キス、されたのだ――と。
ようやく理解に至った。
とともに、胸の奥でじくじくと響く疼きを感じる。
これは何なのか…。
白石さんにされた時とは全然違う…。
ただ、出たら目に押し付けられただけの口づけだったというのに。
揺さぶるように体の芯を刺激してくる。
まるで
こちらから”したい”と思わせるような…。
……って。
俺は何を考えているんだっ。はわわわっ。
コーヒーカップに乗っている訳でもないのにぐるんぐるん目が廻る。
煙が出まくってプスプスいっているポンコツの頭を叩きたくなった。
「野郎ども出て行ったな」
アカツキが入り口の方を見ながら云う。
ほら見ろ。アカツキは平然としたもんだ。
俺だけがテンパって馬鹿みたいじゃないか。
きっと先ほどやった事にも特に深い意味は無かっ…
「……あ…アカツキ?」
自分のことで精一杯でよく見てなかったが、見るとアカツキは顔どころかその首筋まで真っ赤にしていた。
今まで一度も見た事の無いその姿に、知らず息を呑んだ。

