将棋部の部室を出た俺は、一つ教室を隔てた向こうのすぐ近くの柱の影に隠れた。
……大変な目に遭った。
思い返すだけで鳥肌がボコボコとたつ。
まさかサトシの馬鹿があんな事を…。
馬鹿だとは思っていたけど、あんな馬鹿な暴挙に出るとは。
つい殴ってしまったけど気には病まない。
自業自得だ、あんなの。
ここでしばらくアカツキが出て来るのを待とう。
そう思いながら、壁に凭れて深々と息を吐き出す。
その前を男子の群れが通る。
何の気無しにそちらを見ていたが、しかしそいつらは通り過ぎずに俺の前でピタッと立ち止まった。
「――あれ」
そう呟きながら、まじまじと俺の方を見てくる。
そして俺もふと気づく。
「……あ」
見覚えのある男子生徒が数名そこに居た。
嫌な予感とともに思い出す。
確かクラスの喫茶に来ていた客だ。
しつこく名前を訊いてきたからよく覚えている。
「いやぁ、また逢ったね」
にへらと笑いながらその一人が近づき、声を掛けてきた。
その友好的すぎる笑顔が気持ち悪くて、寒気がした。
「…何だ。今一人なの?」
気持ち悪い笑みを浮かべたまま、馴れ馴れしく訊いてくる。
俺は首を振った。
喋るわけにはいかない。
「でも一人で居るじゃん」
「………」
…確かに今は一人だけど。
だんまりを決め込んだ。
「一人は寂しいだろ。俺らと一緒にいかない?」
首を振る。
…勝手にどこへでも行け。
「ちょっとだけ付き合ってくれたらいいからさ」
なおもしつこく誘ってくる。
どうやらマジで俺の事を女だと思っている模様。
こんなに至近距離で気づかないとは。サトシ並みに馬鹿だな。

