「まずい。めちゃくちゃまずい。ひたすらにまずい」
アカツキがさらに言い募る。
「こらっ。何てこと言うんだ」
慌てて止めようとしたものの、
「こんなん飲み物じゃねぇだろ」
どかっと呑み終わったお椀を置くアカツキ。
「おいっ」
するとアカツキは面白く無さそうな視線でこちらを一瞥し、立ち上がった。
心なしか、少し怒っているようにも見える。
「……やっぱり一人で廻る」
苛立った声音でそう言うと、さっさと部屋を出ようとする。
足がしびれてしまったのか、少しその歩きがぎこちない。
「待てって」
慌てて立ち上がる。
「ごめん。白石さん」
座ったままの彼女の方を見た。
せっかく呼んでくれてお茶も立ててくれて…申し訳なく思ったけれど。
…あとでちゃんと謝ろう。
「お茶ありがとな」
手短にお礼を言って、アカツキの後を追った。
「ちょっ待て」
廊下をずんずん先に歩いていくアカツキの後を追う。
「追ってくんな」
その背中が言う。
「何怒ってんだよ?」
全く訳が分からない。
後を追いながら、ふと気づく。
「あれ?これって将棋部のほうに向かってんのか」
最上階の奥。行き着く先は一つだ。
確か将棋部の部員相手に一勝しろとか書いてあったな…。
「…全員に勝ってやる」
苛立ちを間違った方向へと向け、闘志を燃やしているアカツキが言う。
しかもツキを持つアカツキなら実際に勝ててしまいそうなところがまた怖い。
アカツキはガラッと勢い良くその扉を開け放った。
まるで「頼もう!」といわんばかりの勢いで。道場破りか。
地味に将棋を打ったり、オセロをしている人達がいっせいにこちらを見た。
一様に「何だ何だ?」と言わんばかりに目が点になっている。
「あ~あ、もう」と思いつつ頭を押さえる。
どうしてこうも敢えて目立つ場面ばかりに立たされてしまうのだろう。
視線が集まるのを感じながら、諦めて仕方なくその部屋の中へと入っていった。

