茶菓子が廻ってくる。
「…足が限界」
隣で不機嫌そうな声が響く。
「正座なんかマジやってらんねぇ。足崩していいかな」
胡坐を掻こうとしている女子がここにいた。
「我慢しろって。まだ数分しか経ってねぇじゃん」
何て気が短いんだ。お嫁さんに行けないぞ。
「周りを少しは見習え」
するとアカツキの顔が見るからに不機嫌そうに歪んだ。
「誰を見習えって?」
なぜか白石さんの方を見て睨む。
こらっ。誰も白石さんだって言ってないだろ。
しかし我慢する事にしたのか、足を崩さなかった。
「ちっ」
アカツキは舌打ちした後、茶菓子を一口でバクリと食べた。
「シュン」
白石さんが目の前にやってきた。
流れるような立ち振る舞いで向かいに座る。
すっとお椀を差し出す。
「本当は全部部長さんが出してるんだけどね。でもこれは私の立てたお茶なの」
「えっ。そーなの?」
お茶は回し飲みするもんだとかどこかで聞いたことがある気がするけど。
まぁそんなのは正しいかどうかも分からないしどうでもいいか。
「じゃっ頂きます」
こう言うのも間違ってるだろうけどいいや。
お椀を何回廻せばいいとかさっぱり分からんし。
ゆっくりと口に運んだ。
じわじわと舌に苦みが広がっていく。
喉を通っていくドロッとした感じも気持ち悪い。
……うん。
美味しくは無い。無いな。
でもこういう感想ってどういえばいいのだろう。
思いつくのは――、良いお手前で、とか?
「どう?」
訊いてきた。
「……えーっと……良いお手前で」
言っちゃった。
そのまま言っちゃった。
「良かった」
にっこりと笑う。
とりあえずこれで良かった…のかな?
「来てくれてありがとうね」
俺の顔を見て、にこにこと嬉しそうに笑う。
「う、うん…」
その笑顔を真正面から受けて、どぎまぎしてしまう。
普段も可愛いけど、今の白石さんはさらに何かが華やいでいるような感じがする。
頬が熱くなっていくのを感じる。
「…まずい」
その空気をぶち壊す無粋な声が隣から聞こえた。

