「――…ってな訳なんだけど」
西の空が燃えるように赤い。
夕日の残光が目に差し込んできて眩しかった。
部活を終えたアカツキを交え、白石さんと共に3人で並んで帰り道を歩く。
俺は白石さんから聞いた事情をアカツキに説明した。
「そう云うわけでさ、
お前ちょっと白石さんに協力してやってくんないかな?
ただ、その勝負の時にお前が居てくれればいいっていうだけなんだって」
「断る」
アカツキは即答した。
おいおい。返事早っ。
ちょっとは考えるか悩む素振りぐらい見せろ、と思った。
「お前なぁ、白石さんは心底困ってるんだぞ。
何も大変なことを頼んでるわけじゃないんだし」
何とか説得しようとしてみるものの、
「私が居るだけで、勝てるとは思えん」
アカツキはにべもなく云った。
「確かにそうかもしれねぇが、お前の周りはよくラッキーなことが起こるだろ。
まぁ大した事無いかもしれないけど、ちょっとその運の良さにあやかってみたいなってだけの話だ」
俺にとってはめちゃくちゃ大した事であるけど…
奴の強運に俺の全てが運命付けられていると言っても過言ではないくらいに。
「…って、そういうことだよな?白石さん」
一応、当の本人さんのほうを振り返り、同意を求めた。
すると白石さんもコクコクと首肯した。
「どうかお願いします」
彼女もぺこりと丁寧にお辞儀した。
「……ふん」
しかしアカツキはくだらなさそうに鼻を鳴らした。
その態度から察するに、承諾する気はさらさら無いらしい。
しかもナゼだか蔑んだような目つきで俺を一瞥した。
何でだ?
「くだらん」
アカツキは俺達二人がかりの嘆願を跳ねのけ、すたすたと歩いていく。
「おい」
声を掛けようが、完全無視。
白石さんの境遇を知っても、同情の一つも無いとは。
…なんて女だ。鬼か。
アカツキの背を見ながら、
血も涙も無いとはこういうことをいうんだな、と一人納得した。

