Fortunate Link―ツキの守り手―




「……づかれたーっ」

やっと天使メイドから解放され、首を廻しながら廊下を歩く。

びっくりするほどにゴキゴキ鳴った。

あの後、副委員長さんは「ご苦労さん」と労ってきた後、「時間があったらまた手伝いに来てね~」と笑顔で云ってきた。

もう本当にごめんこうむりたい。


「さぁて、どこから行くかな」

ほんの少しだけ肩の荷が下り、ほっと息を吐く。

と言ってもまだ女の格好のまま。この格好に少し慣れつつある自分が怖い。


「…………」

アカツキはじっと無言で宙を睨んでいた。

その視線の先に虫が飛んでいる……わけではなさそうだ。

「おーい」

呼び掛けてみる。

「…………」

どうも今日のアカツキは難しい。

不機嫌だったり不機嫌だったりたまに怒り出したり。

先ほどのあの突拍子もない行動にも驚かされた。

(そういえばさっきの男…)

先ほどのあの黒スーツの男の顔を思い返す。

『このクソ暑い中で、暑苦しく黒スーツ着込んどる奴やからすぐ分かると思うわ』

外見も瀬川が言っていた姿と一致する。

(深海翠(フカミスイ)って言ってたっけ…)


「……シュン。おい。シュン」


アカツキの呼ぶその声に、はたと思考の中から現実に抜け出した。

いつのまにか、アカツキはこっちを向いていた。

「さっきの男について考えてたのか?」

鋭くそう訊いてくる。
俺って、そんなに考えていることが分かりやすいのか。

「…いや、あの…」

「一度会ってるな、船の上で」

俺は目を丸くした。

「よく覚えていたな…」

「ふん。
それより、なんであの男がここにいる?
やっぱり瀬川と関係あるのか?」

「関係はあるんだろうけど、なんでここに居るのかは俺もわからん」

俺も首を傾げた。
分からないが、分からないからこそ不気味ではある。

「とにかく今日一日は気を付けていこう」

フォックス・ハントというゲームに加え、厄介そうな人物の登場。
気疲れしそうな一日になりそうだ。