Fortunate Link―ツキの守り手―


しかし隣の副委員長さんは、スチャッと指でメガネのフレームを押し上げ、

「ふむ。それは調査の必要が有りそうね」

俺の背中を押しながら、ひょいと仕切りから顔を出して室内を伺った。


「…ややっ」

何かに気づいたらしいその横顔が紅潮する。

「もしかしなくても、あの人ですかな?」

口調はオッサンになって、頬を両手で押さえるその仕草だけは乙女っぽい副委員長さんは言う。

俺も何となく気になって、そちらを覗き見した。



確かに居た――。

こんなクソ暑い中で、真っ黒なスーツを着こんで涼しげに佇んでいる男。
異様な格好をしているにも関わらず、独自の空気の中に自然に溶け込んでいる。

まるで自分からマイナスイオンを発して、そして自分で涼しんでいるのかのよう。

姿勢は正しく、他人に入り込む隙を与えないような印象を放っている。


「うーむ。このままずっと眺めているのもいいけど反応を見てみたいわね」

副委員長さんは顎に手を当て、真剣に考えている。
でもきっとこの人の考えている事はろくでもない事のような気がする。

「ねぇ。あの人コーヒー注文してるから持ってかなきゃいけないけど」

考え込む副委員長さんの肩を叩いて、先ほどの女の子が言う。

「…よし。じゃあ、守谷君持っていって」

「え?」

拒否する間もなく、コーヒーの乗ったトレイを押し付けられる。

「あの人が可愛い子を前にしてどんな反応を示すのか見てみたいのよ」

「可愛い子って…」

それって一体誰の事を言ってるんですか。

「思いっきりいい笑顔を見せ付けるのよ。ほら頑張って」

強引に押し出されて危うくつんのめりかける。

「うわっ…おっと」

奇跡的な平衡感覚でバランスを取り戻し、しかしもう戻るに戻れず、仕方なく目的のテーブルへと向かった。