何気なく歩きながら、こっそりと廊下を行き交う人の波を観察した。
そっとちらっとその生徒達の様子を盗み見る。
彼らは和気藹々と喋り合いながら、横を通り過ぎていく。
気づかれている様子は無い。よし。
内心ヒヤヒヤしながら、自分を奮い立たせて歩く。
こっちを見ないで見ないでと周りに念じて歩く。
空気になりたい。壁になりたい。床にでもなりたい。風景の一部として溶け込みたい。いっそ自然と一体化してしまいたい。
時折、見知らぬ男子から熱い視線が注がれたりしてギクリとする。
……いかん。自意識過剰か。
自己反省。
それでも自然と速足になる。
気にし始めたらきりがなく。
全員が自分を見ているような錯覚にさえ陥る。
いや。錯覚ではなく実際にそうなのかも。
だって俺、男だし。そりゃどうやっても不自然に映るよな。
それに考えてみれば、既に知り合い二人にバレてる。
もうそろバレちゃう頃合なのか。
「……っ」
とりわけ鋭い視線を感じ、前方を見た。
バチッと。
音こそしなかったが、表現するならまさしくそんな感じで目が合った。合ってしまった。
しかも相手は物凄く目つきの悪い男子。
見るからに尖っている。ヤバそうな空気を放っている。触れれば感電しそうなオーラを放っている。
怖~~っ。
触らぬ神に祟りなし。
一瞬にしてそそくさと素早く目をそらした。
…いやいや。今のは見てないから。見たくて見たわけじゃないから。たまたま前方を見たら視界に入っただけだから。
心の内でひたすら言い訳を連ね…。
しかしあろうことか、その相手は――、
「やんのかコラ」的なガン飛ばしながら、ずんずんと俺の方に近づいてきた。

