「…ん…んんー…」
浮き上がるように意識が醒め、ぼんやりとしつつ目蓋を押し上げる。
目覚めは最悪だった。
背中にゴリゴリ感じる硬い床の感触と、鈍く痛みを訴える横っ腹と。
そしてどこからともなく流れてくる会話――、
『――お、お前どうしたんだ?』『あなたこんな時間までどこをほっつき歩いてたの?』『いったい何を言ってるんだ、亮子』『すっとぼけるのもいい加減になさい』『何の話だ』『その禿げ頭に張り付いてる長い髪は誰のものだって訊いてんのよ?』『え?いや。これはその』『黙んなさい。言い訳なんて聞きたくもないわ。もう私全て分かってるんですもの』『ちょっと待て。お、落ち着け。頼む。話を聞いてくれ。亮…ぎゃわあぁぁぁっ!!!』
テレビから響く断末魔の悲鳴。
画面内では思わず合掌したくなるような一方的な過激な暴力が振るわれていた。
修羅場と化した家内。夫婦の行く末やいかに。
「ザ・鬼嫁ウォーズ・パートⅡ」絶賛放送中。
『――こんの禿げェッ!甲斐性無しィ!きぃぃーっ!!』
という罵詈雑言と打撃音が響く画面をぼんやりと眺めやりながら、
「…あ、あれ?」
そのテレビの前に居座り、すっかりくつろげている様子の彼女を見る。
「あー。やっと起きましたかぁ」
ずずっと湯飲みに淹れたお茶をすすり、「はふぅ」と息を漏らす。すっかりリラックスモードだ。
「ご飯ならもう頂いちゃいましたー」
「……え」
ふと見るとテーブルの上には食べ終えた残骸のみが置かれていた。
見た目だけは美少女な、その、夕月さんは俺の方を見て笑って告げる。
「あ、でも安心してください。アカツキさんがあなたの分を取り分けて、冷蔵庫にしまってましたよ」

