「…あたたたっ」
背中を床に思いっきり打ちつけ、じんじんと痺れるように痛む。
体を起こしてみようとしてみるが、腹の上に何かがずしんと乗っかっていて重い。
「――いってぇなぁ。くそ」
すぐ耳元でその不機嫌そうな声が届いた。
覆い被さるように乗っかっている相手…アカツキはもそりと顔を上げる。
そして俺もちょうどそちらを見ていて――、
「……え」
「……あ」
顔と顔との間、数センチという超近距離で目が合った。
その触れるほどのあまりの近さに…、
「「…………」」
目が合った途端にピシッと氷漬けにされたように硬直。
アカツキも声を漏らしたきり動かない。
(…やばっ。離れないと)
そう思うのに、どうしてだか動けない。
鼻先を甘い香りが掠める。
(……香水?)
それがすぐ傍のアカツキのつけてるものだと気づく。
(あれ?いつもはそんなのつけてたっけ?)
不思議に思いつつも、目の前の顔を見る――。
アカツキは口を「あ」の形に開けたまま。驚愕と困惑に目を見開いたまま。
やがて固まっていた筈のその表情に異変が起こる。
何か感情を押し隠すように顔を歪め、しかし見る見るうちに頬がほんのり朱に染まっていく。
隠し切れない動揺に瞳を揺らしながら。
俺は驚きつつ、その様子を見ていた。
(……な、なぜにそんな顔を)
こちらまで伝染するように動転してしまう。
てっきり「おら邪魔だ」とか言って手足が伸びてくるかと思ってたのに。
その表情に惹きこまれ、吸い込まれそうになっている自分に気づく。
今のアカツキからは何だか”女の子”の香りが漂ってて、頭がクラッとくる。
(…ダ、ダメだ。このままだと色々とダメ…)
手に負えない感情が胸の奥で湧き起こる。
立ってもないのに立ち眩みのような眩暈が襲う。
その酩酊にも似た熱い痺れに、脳の思考回路が完全に麻痺していった。

