突然辺りにおちる沈黙――。
「…………」
目の前で繰り広げられた戦闘の余韻に俺はしばらく呆けていた。
すると、
「大丈夫ですか?」
圧倒的強さを見せつけた彼女はくるりとこちらを振り返り、訊いてきた。
その声に慌てて我に返る。
「…はぁ」
そりゃ勿論大丈夫なわけですが。
「取り合えず…ありがとうございます?」
疑問形になってしまう。
一応…助けて貰ったことになるのだろうか。
「いえいえ」
むふふふ、と笑いながら言う。
街灯に浮かび上がるその笑顔は、先ほどの戦闘が嘘のよう。
見た目の歳相応にあどけなく可愛らしい…。
そう思いかけていると、
「――それだけですか?」
彼女は笑顔のままそう訊いてきた。
「……へ?」
戸惑う俺に畳み掛けるように、
「今まで何度、命懸けの場面で、あなた方のことを助けてあげたでしょうね?俊くんが不甲斐ないばかりに」
何だろ。声は優しいのに脅迫的なこの威圧感。
「今だって私が手を貸さなきゃ確実にヤラれてたでしょうね」
笑顔のまま「やれやれ」と両手を上げる。
「今までのことと合わせてもっと私に感謝があってしかるべきではないでしょうか?」
口調は穏やかでニコニコしながら言うが、間違いなくその顔は「感謝しろ」と主張していた。
「そういえばお腹空きましたね。助けてあげるためにいっぱい動きましたしねー。」
俺はうんざりとしつつ、念の為に聞いておく。
「はっきり言えよ。
ご所望は何だ?」
「何か奢って下さい♪」
終始絶やさない笑顔で相手はそうのたまった。

