俺はもう一度安堵の息を吐いた。
「それにしても、よく分かったな…」
「ん?」
アカツキは首をかしげ、俺を見る。
「いや。
あれだけでよく俺の言いたいことが分かったなあ、と思って」
「……ふん」
アカツキは鼻をならした。
「お前の顔さえ見れば、その単純な考えなんてすぐ読める」
「あのなぁ……って、アカツキ?」
何か言ってやろうとした瞬間、アカツキの表情が強張った。
「シュン!後ろ!!」
「……え?!」
後ろを振り返ると、そこに――。
「――とどめはちゃんと刺さなあかんで」
さっき倒した筈の瀬川蓮が立っていた。
その手には刃物――クナイを大きく振りかぶって。
すっかり油断していたせいで反応が遅れ、防御が間に合わない。
――と、その時。
黒い影が目の前に舞い降りた。
――ギィイーン!!!
響き渡る剣戟の音。
翻る黒髪。
小柄な女性が俺の前に突如として現れ、翳した小太刀で瀬川のクナイの刃を受け止めていた。
「ほぅ。これはこれは…」
瀬川は眼前の相手を見止め、目を細めた。
「天井から人が降ってくるなんて、一体この学校どうなってんの?」
ふと上を見ると、天井の板の一つが外れており、ぽっかりした暗闇が覗いている。
「何があるのか分からないのが人生ってもんでしょう。
俊君もそう思いません?」
その女の子は俺の方をちらりと振り返り、そう言った。
黒髪の前髪に、一筋だけ入った金色のメッシュが印象的の白衣の少女。
「日暮夕月(ひぐらしゆづき)?」
「ちゃんと覚えていてくれたとは光栄です♪」
ニコリ、と愛らしいえくぼを作って微笑んでくる。
「まさかいきなり現れた初対面の相手に人生論を説かれるとは思わへんかったわ」
瀬川はそう言って、受け止めていた刃を押し返した。

