「なんや。結構思い出してきとるやん」
その言葉に俺はハッとして、目の前の瀬川を見た。
奴の目はひたと深い闇を湛えてこちらを見据えていた。
(……心の中を覗かれた?!)
その視線に全てを見透かされているような薄気味悪さを感じた。
そう言えば少し前にこいつと対峙したとき、視線だけで身動きを封じられたことがあった。
相手の目を見ることで相手の心に入り込み支配できる催眠術か何かの使い手なんだろう。
しかし、そうやって奴と目を合わせることが危険だと分かりながら、その視線から離すことができない。
「お前は……」
心を支配されまいと相手を強く睨み付けた。
「お前はどこまで知っている? 」
すると瀬川はいきなり突きつけられているクナイの刃を素手で掴んだ。
驚く間もなく、次の瞬間に頬に強烈な衝撃を感じ、身体ごと吹っ飛ばされていた。
床を転がり、口の中には血の味が広がる。
「だからそれはお前自身で気づかなあかんって
言うてるやろ」
瀬川は掴んでいたクナイを投げ捨てた。
切れた掌から流れる血をペロリと嘗め、楽しそうに笑う。
「それでもどうしても知りたいっちゅうんやったら、本気で俺にかかってこいや」
俺は口の中の血をペッと吐き出し、立ち上がった。
木刀を握るが、本気で、と言われ、少し戸惑う。
この木刀、一見木刀に見えるが、刀身が更に抜けるようになっており、その中身は抜き身の真剣となっている。つまりは木刀に見せかけた仕込み刀というものである。
「どうした?俺は本気やで」
そう言うと、奴の目付きが変わった。
その取り巻く雰囲気が変わったのを肌で感じた。
――来る。
目を合わせたらヤバイと分かった。
とっさに足元の鞄を蹴り上げる。
そうして、奴の視界を塞いだ。

