アカツキは何も言わずに相手の方を見ていた。
手も出さない。
代わりに俺が口を開いた。斬り込むように。
「…監視だと?
てめぇ何者なんだよ?」
黙って聞いてりゃ、相手はかなり上から物を言ってきている。
それが気に食わない。
「別に何者でもない。
少なくともお前よりは普通の人間やと思うけど?」
「……どういう意味だ?」
「普通の人間が強運なんていう得体のしれんもんを守りきれると思うか?」
問いかけに俺は詰まった。
瀬川はさらに畳みかけてくる。
「なんでお前がツキの守り手なんか――。
それを宿命づけたものは一体何や?
お前はどこまで自分のことを知っとる?」
「それは……」
…アカツキの幼馴染だから…?
違う。それだけでは理由として弱すぎる。
俺は一度眼を閉じて考えた。
『――明日からこれを使って明月ちゃんを守りなさい』
聞き覚えのあるいつかの声が耳にこだまする。
俺は無意識のうちに竹刀袋を持つ手に力を込めていた。
「なんや?ヤル気なんか?」
「……教えろよ…」
その声は自分でも驚くほど震えて頼りないものだった。
この頃、夢や幻によく見る白銀の髪をした女の人。
それから自分が夢の中で「父上」と呼んでいた男の人。
彼らは自分にとっての何なのか…。
俯いて見えた地面が少し揺れているように感じた。
今まで当たり前に享受していた母さんとの暮らし。
当たり前に立っていた地面。
けれど、今、自分がどんな地面の上に立っているのか 、よく分からなくなってきた。
「お前は俺のことをどこまで知ってる?何を知ってる?――洗いざらい教えろよ」

