しばらく心身ともにヘロヘロなままその場を動けなかった。
それでも何とか体育用具室から脱し、授業終了を迎えた。
更衣室で着替えを済ませ、何とも無い顔を繕って教室へ戻る。
口には、まだあの生々しく熱い感触が残っていた。
白石さんの甘い薫りが顔に染み付いているような気さえする。
うぅ…。思い出しただけで、頭がどうかしてしまいそう。
脱力状態は未だ引き続いていて、全身にうまく力が入らない。
色々な意味で立ち直れない、というのが今の心境。
しかし、気分が入れ替えられないままに次の授業が始まってしまった。
6時間目はホームルーム。
もうじき学園祭らしくて、色々決めることがあるんだそうな。
黒板前に立つ学級委員長が手もとの紙を見ながら、ダラダラと告げる。
「――まずは学園祭の名物行事、”フォックス・ハント”のクラス代表を決めたいと思います」
すると早速、クラスの男子の一人が「ハーイ」と挙手した。
「フォックス・ハントって何すか?」
すると委員長は「ちっ」と舌打ちして説明を始めた。
決めることだけを決めて、面倒な説明とかは省きたかったのかもしれない。
――フォックス・ハント。
直訳すれば『キツネ狩り』
各クラスから男女一名ずつ選出し、男は女に、女は男に”化ける”。
要するに彼らが”キツネ”。
そしてそのキツネ達は学園祭当日、普通に生徒として学園内に紛れる。
全校生徒がハンターとなって参加し、学園祭を楽しみながら自分のクラス以外のキツネ達を探し出し、その本性を暴くと言うわけだ。
最後まで上手くキツネの化けの皮が剥がれなかったクラスには、後夜祭に出れるという特権が与えられる。
何だか微妙な特権。
後夜祭なんだから全員参加すればいいじゃん。
同じくそう疑問に思った奴が委員長に尋ねていたが、
「予算の都合上、仕方ない事らしいです」
とリアルな回答が返ってきた。

