白石さんの吐息が頬を掠める。
生温かくて、蜜のような甘く良い香りがする。
「…な、なな何をおっしゃられてい…いいらっしゃるんですか?」
強い警戒信号が脳から発せられる。
というか頭の中は既にパニック状態で妨害電波で乱されまくり。
「こんな薄暗い中で二人きり。
ってことはもう、やることなんて決まってるよね?」
いかん。危険だ。
目が廻りそうな意識の中、ぐちゃぐちゃに混線しきった頭脳が命令を下す。
…総員部署につけ!緊急退避せよ!逃げ遅れたらホオジロザメの餌食にぃぃぃっ。
「……っ」
しかしその口は呆気なく彼女の柔らかい唇にふさがれた。
それはいわゆる情熱的なキッスというやつだった。
しゃぶるように口に吸い付いてきて、舌を入れてきて舐め回され…。
「んぐんん…」
変な喘ぎが漏れた。
慣れてないことバレバレだ。
為されるがままに口腔を蹂躙される。
その熱くて甘すぎる衝撃に、脳細胞は溶けて再起不能になった。
そしておそらく生気のほとんどを吸い尽くされた。
軽く一分ほどを越えて、ようやく嵐のようなそれから解放された。
「…どうだった?」
妖艶な声が耳元に響く。
しかしそれに対して何も言葉を返せない。
彼女はもう上体を起こしているというのに、こちらは起き上がる事すら出来なかった。
ヘタリと全身の筋肉が弛緩している。
…やばい。腰を抜かしてしまったのかもしれない。
完全に骨抜きの魚…どころかもう軟体動物だ。
情けなくて、何かもう泣きたい。

