「…うわ。このカレー甘ったるすぎるわ」
しかしチャラ男は軽く無視しやがった。
スプーンを咥えながら七味唐辛子をどばどば掛けている。
「しかも全然出ぇへんやん。これ」
思いっきり赤い粉が出ているのに、奴は不服そうだ。
ついには我慢ならんとばかりに入り口を狭めている白いキャップを取り払った。
ドドドッと雪崩れのように出てくる唐辛子。
カレーは赤い海と化す。
俺は思わず口元を抑えた。
見ているだけで目が刺激されそうだ。
「てめぇ、味覚イカれてんじゃねぇの?」
いや。間違いなく舌に異常をきたしている。
だがその発言がいけなかった。
「何言っとるんや」
ヘラヘラ笑いが、途端にむっとした表情になった。
「どんなマズイもんもな、唐辛子掛けるだけで味が生き返るんや。お前も試してみ」
何か口を挟むもなく、奴は俺の中華丼をドバッと七味の海にした。
「おいっ!何してくれちゃってんの?!」
「新しい刺激との出会いや」
…うわー。最悪だよもう。
奴の頭がオレンジ色なのは、唐辛子を過剰摂取しているからに違いない。
一気に食欲が失せたが、残すわけにもいかない。
仕方なくそれを口に運ぶ。
「……っ!!」
ドラゴンなら確実に火を吐いていたと思う。
…劇物だ。劇物だよコレ。催涙ガス並みの。
現に涙ではなく鼻水がダーと出てきた。きっと鼻の粘膜が刺激されたんだろう。
舌が痺れて物も言えない俺の前で、アカツキが代わりに言葉を発した。
「てめぇ、質問はぐらかしてんじゃねぇぞ。
また映画のイベントショーの時みたく私らを襲ってくるつもりじゃねぇだろうな?」
例によって蝿をも射止めんばかりの眼光でチャラ男を射抜いていた。

