Fortunate Link―ツキの守り手―





翌日の朝も、アカツキは母さんから預かったという合鍵を使って俺の家に勝手に上がりこんでいた。

昨日あんなことがあったので、俺は少しの気まずさを感じていたが、アカツキはいつも通りのアカツキだった。

今も胡坐をかいて、おっさんみたく床に新聞を広げてしかめっ面で読んでいる。

変わらぬその様子を横目にしつつ、俺はほっとしながらテレビを見る。

「うわ…。いて座が最下位だ」

画面には今日の運勢ランキング。
って、今日も最下位かよ…。

「――派手な行動は慎みましょう。ラッキーアイテムはオレンジっぽいもの」

おいおい、昨日の占い結果の使い回しじゃねーのかこれ。
と、そこでふと気になってアカツキに訊いてみた。

「お前はどうなんだ?」

「あん?」

「ほら、今日の運勢」

テレビを指さすと、アカツキは顔をあげてちらりとそちらを見やり、

「…5位だな」

つまらなさそうにそう言って、再び新聞に視線を戻す。

…あれ。
なんだ、ツキを持っているという割に普通の結果じゃないか。

拍子抜けしつつ、ふと考える。

ツキはただ単に運が良いというものじゃないのだろうか。


『――何や、お前。もしかして『ツキ』イコール『ラッキー』なもんやと思っとんちゃうやろな?』


耳の奥でふいに響く。
あの関西弁のオレンジ頭、瀬川蓮が言っていた言葉だ。


『強運なんて都合のええもん、裏があるに決まってるやろ。
光あれば必ず影がある。代償は払わなあかん』


(……代償)


心の中でその言葉を呟く。
胸の内にもやもやと広がっていく不安とともに考えずにいられなかった。

――ツキとは一体どういうものなのだろうか、と。