Fortunate Link―ツキの守り手―





屋上へと一目散で駆け上がってきて、まずそこで驚いたのは、その扉が無くなっていた事だ。
びっくりしつつも開けたその向こうへと目をやった。

アカツキとあの黒装束の人物がまだそこに居た。
その事に心底ほっとしたのもつかぬ間、黒装束のそいつがアカツキに鎖鎌を振るおうとしていた。


慌てて、さっき階段の掃除用具入れから調達してきたばかりの物の中の一つ…バケツを狙い定めて蹴り上げた。
つま先が非常に痛かった。だって硬いし。

足は痛めたものの、無事にバケツは分銅に命中した。


敵の注意はこっちに向いた。
好都合だ。

「――ちっ」

そいつは恨めしそうに舌打ちした。

っておいおい。こっちが恨みたいよ、ほんと。
屋上から思いっきりぶん投げやがって。危うくあの世行きだったぞ。


相手は身構えてこっちを見つつ、そして眉尻を上げた。

「せっかく無事だったものをわざわざ殺されにきたんですか?」

俺の手に握るものを見て、蔑んだような目で見てくる。

「そんなもので私とやり合うつもりですか?」

相手の武器は鎖鎌。
対する俺は掃除用のモップと塵取りだ。

どうよコレ。最強だ。
大穴間違い無しだ。これで勝てたら万馬券が出るかもしれない。

「はっ。掃除用具舐めんなよ!」

自分を奮い立たせるために強気で吐く。
このセリフも何だか間違っている気はするけど、細かいことは気にしないでおこう。


だって仕方ない。
教室まで戻るには時間が掛かる。
それよりもアカツキのことが気が気でしょうがなかった。

しかし手ぶらで敵陣に突っ込むのは無謀すぎる。

そういう訳で、階段を上る最中に見つけた掃除用具入れから持てる範囲で色んな物を掴んできた。
今思えば、消火器あたりの方が良かったかもしれないが、あの使い勝手がよく分からん。下手したら自分が粉まみれになる。

まぁいいや、もう。
グチグチ悩んだって仕方ない。

覚悟を決めて、敵と向かい合った。