……忘れる?
駄目だ――と何かが激しく警鐘を鳴らす。
塗り込められていく虚無の闇の中、明月は俊の声を聞いた気がした。
『――お前は俺が守るッ!!』
そう。
あいつはそう言ったんだ。
保健室で襲われた時、迷いない目でそう言い放ったんだ。
そんなあいつがこんな簡単に私の前から居なくなるわけがない!
明月は、ぎりり、と奥歯を噛んだ。
怒りが突き上げる。
心を取り囲もうとしていた闇を弾き返す。
と同時に何かがはっきりと覚醒した。
嵐のように荒れ狂う何かが
抑えきれない何かが…
(……忘れるだと?)
「――勝手な事を抜かしてんじゃねぇぞ!クソが!!」
相手に向かって吼えた。
それに呼応するように視界の隅で屋上の扉が弾け飛んだ。
頑強そうな鉄扉が蝶番ごと外れて吹っ飛び、激しい音を打ち鳴らして床に倒れた。
その想定外の出来事に、黒装束の女は驚き、声も出なかった。
そちらに気を取られ掛け、慌てて視線を目の前の明月へと視線を戻した。

