「あなたは守谷俊に守られることを強く望んでいる。
けれどそれと同時に恐れていることがある――」
「……何」
相手は何が楽しいのか、ますます愉快そうに顔を歪める。
「本当は薄々気づき始めているのでしょう?
あなた自身が誰かに守られたいと願うことが脅威になることを…」
「………」
「そういえば昨日は皆既月食でしたね。
思い出したんじゃありませんか?10年前のあの夜のことを…」
見開いたままの明月の双眸が揺れた。
「あなたは恐れている。
一身にあなたを守ろうとするあの子が、母親のように命を落とさないか?と」
明月はよろけるように少し後ずさった。
ずん、と眩暈でもないのに、目の前が暗くなった気がした。
「それこれもあなたのせいです。
あなたがそう望むからそうなってしまう。
あなたの持つ強運とはそういうものなのです」
……私のせい?
明月の心を霧のような闇が取り囲もうとしていた。
呑み込まんとするように。
「ですが悩む必要などありません。
こうやって居なくなってしまったんですから、あの子の事なんて忘れてしまえばいいんです」
甘く誘惑するように、揺れる心を誘おうとする。虚無へ。

