「随分と情けない顔をしていますね」
その声にハッと顔を上げる。
俊を投げ飛ばした本人が、明月の前に立っていた。
明月はその黒装束の女をぎろっと睨んだ。
(今の、この理解不能な現実以上に胸糞悪いツラだ…)
その顔を見るなり、殺意以上のどす黒いものが腹ん奥から突き上がってくる。
……憎い。
「…ざけんなッ!!」
感情のままに拳を振るった。
その鼻っ柱、へし折ってやる。
バシィィッッとぶつかり合う音が響き渡った。
屋上の床にジン…と反響する。
拳は相手に届くことなく、その手で受け止められていた。
にやりと吊り上がる口角が目に入った。
「――そんなに大事ですか?あの子のことが」
明月は愕然と眼を見開いた。
「……大事?」
――シュンのことが…。
「……自分で自分の感情が分からないとは、愚かですね」
その粘着質な笑みが癇に障る。
「――分からないなら教えてあげましょう。」
心の内を全て見透かすような瞳がこちらを捉えていた。

