俺は席を立ち上がった。
「おい?どうした」
サトシの声が耳元を通り過ぎる。
九兵衛の姿は相変わらず俺とアカツキ以外には見えないようだ。
見えている俺は、九兵衛の姿をじっと見据える。
九兵衛が俺を呼んでいる――ということはアカツキに何かあったのだろうか。
むくむくと不安はたちまちに膨らみ、俺はたまらず教室を出た。
九兵衛は俺を誘うように、つかず離れず前方を飛んでいく。
その後をついて行きながら、階段を昇り、南校舎の屋上まで来てしまった。
屋上の鉄扉をあけると――、
「……あ」
給水塔の影に、見慣れた背中があった。
その背中が振り返る。
「シュン」
さらりと翻る金髪。
そこには何食わぬ顔したあいつ。
そう。アカツキだ。
「なんだ。何事もなかったか…」
いつもと変わらぬその顔を見て、ほっと胸をなでおろす。
「……?…どうした?」
「いや…。そいつが俺を呼ぶみたいに飛んでくるもんだから…」
今や大人しくアカツキの肩にとまって、呑気に嘴で羽繕いしている九兵衛を指さして言った。
「ああ」
アカツキは九兵衛をちらりと見下ろし、
「そりゃ、私がこいつに、お前をここに呼ぶように命令したからな」
しれっとそう言った。

