「へぇ。
なかなかの反射神経やんか…」
オレンジ頭の男は面白そうに目を細めて言った。
俺はピンと緊張の糸を張り巡らせる。
向けられている黒い銃口には、細長い筒――即ち発射音を押さえるためのサイレンサーが取りつけられている。
勿論、それは一般人が扱える代物じゃない。
「お前は何者だ?」
相手を睨み、問いかける。
「……あれ?おかしいな。
覚えてへん?
一回会ってる筈なんやけど。船の上で」
オレンジ頭は首を傾げて笑いながら答える。
俺はまじまじと相手の顔を見た。
――船の上。
オレンジ色の頭。
薄暗い部屋…。
スーツ姿の男。
「………」
……思い出した。
「…お前…あの時の……」
先日の客船クルーズで、犯行予告の場所を探していた時、アカツキが見つけた客室の中で…。
白石さんの父さんと話していたスーツ姿のあの二人組のうちの一人だ。
今日はラフな私服姿なので、あの時とちょっと雰囲気が違った。
「…思い出してくれたか」
オレンジ頭の男はにっと笑って言った。
「あん時はこそこそ隠れとったみたいやけど、俺は気付いとったで?
机の下におったあんたら二人の気配を」
「……お前…」
直感的に認識する。
……この相手は危険だ、と。
「……何者だ?」
「そんな怖い顔せんといてや。俺はただのしがないフリーターや」
「フリーターが街中で音消して銃をぶっ放すのかよ?」
「世の中にはいろんな職業があるもんやで。
……お前にも裏の顔があるように、な」
「……なっ」
すると相手は口元だけでにっと笑った。
「なぁ。
お前のその懐に隠してるもん、俺にも見せてぇや」
そう言うやいなや、相手は庇の上を走り出した。
タンタンタンッと足音を響かせ、俺のいる方向へむけて駆けてくる。
「……くっ…」
俺はとっさに上着の内側に忍ばせてあったものを手に取った。

