「…な、無茶だろ」
アカツキが俺の肩を掴む。
自分の時はまったく迷わず特攻しようとしてたくせに、人がやろうとすると止めてくる。
「いいから。
お前は大人しくしてろ」
その手を振り払う。
そして、袋の紐をとき、木刀を抜いた。
「お前が鉄腕女だろうが何だろうが関係ねぇ」
木刀の刀身部分に手を掛け、さらに抜き放つ。
「――お前は俺が守る」
抜き放たれ、木刀の中から現れたそれは射ぬくような輝きを放つ真剣。
木刀に見せかけた仕込み刀だった。
忍が武器を隠し持つために考えられた暗器。
ずっと前に訓練で使ったきりで、実践で使うのは初めてだ。
「なかなか格好つけてくれますね」
相手は刀を握る手とは逆の手を懐に差し入れ、何かを取り出した。
手の中に構えたそれは先の尖った矢のような形状をしている。
棒手裏剣だと分かった。
「ヒロインを救うヒーロー気取りで美味しいとこ取りですか。
ですが、そうは問屋が卸しません!」
そう叫ぶなり、手裏剣を放ってきた。
予想していた俺は、ベッドの上をすべるように乗り越えながら避ける。
着地で床にぶつかる勢いで屈み、そこから勢いよく浮き上がり、一瞬にて相手に肉薄。
同時に視界の隅に、迫る白刃を捉えていた。
後ろ手に隠し持っていた枕を突き出す。
先ほどベッドを乗り越える際に掴んでいたのだ。
――ザシュッ
短刀の刃は枕に深々と埋まり、相手は一瞬動きを止めた。
「……なっ」
その隙を逃さず、もう片方の手に持つ刀を降りかぶりながら、柄を持ち変える。
そして一気に袈裟掛けに振り下ろした。
相手の身体に打撃を与えるべく放たれたそれは――、
しかし、
――ガィィィィン
目の前で止められた。
相手の、短刀とは逆の手に握られた小太刀によって。

