*
イベント会場の控室から逃げた男を追いかけて、俺はデパートの外へと出た。
と、そこで、デパートと駅を繋ぐ連絡橋の下に、あのオレンジ頭の男を見つけた。
そいつも俺に気付いたのか、こちらを見上げてにやりと笑った。
そしてさっと身を翻す。
「……野郎」
嘲笑うかのような態度に苛立った。
逃げる相手をたどって、駅前通りへと入る。
通りには人が多いが、奴の派手な頭のお陰で見失うことはなかった。
やがて通りからそれて、脇道をどんどん突き進む。
(どこまで行く気だ…)
脇道からもさらにそれ、薄暗い路地裏の道へと曲がる。
(……人目に付かない場所に誘い込む気か)
先行するオレンジ頭の姿が角を折れて消える。
俺もその後を追い、角を折れる。
けれど少しだけ走る速さを緩めた。
ある種の勘が働いた。
こういう死角は、待ち伏せされてたり、不意打ちを食らわされたり、その危険性が大いにある。
俺は警戒しながら、その場所に踏み込んだ。
そしてそこで足を止めた。
「…………」
その先には誰も居なかった。
建物と建物に挟まれた狭い場所。
冷暖房の排気用のファンがブォーと音を立てて廻っており、妙な匂いがこもっている。
ポリバケツ、ビールビン、ゴミ袋…。
色んなもの雑然とあった。
しかしこの場所に入っていた筈のその姿だけは見当たらない。
俺は辺りを探るのをやめ、動きを止めた。
(―――いや…)
ピンと張りつめさせた感覚に何かが引っ掛かる。
(――――居る)
その気配を察知すると同時に、俺はその場を飛び退った。
――――カンカンカン…
地に音と衝撃が響く。
俺がさっき立っていた地面に、三つの穴が穿たれた。
どう見てもそれは実弾だ。
(……マジかよ…)
俺は跪いた姿勢で前を見上げる。
建物から突出した庇の上。
そこには、硝煙を漏らす銃口をこちらへ向け、不敵な笑みを浮かべたオレンジ頭の男が悠然と立っていた。

