Fortunate Link―ツキの守り手―



ショーのストーリーは、映画の内容から部分的に取ってきて簡潔にしたものだった。


奈良へ修学旅行に訪れていた乙女戦隊のメンバー達。

楽しそうに鹿と戯れているところから始まる。

背後のスクリーンには奈良の風景が映っていて、リアルな作り物の鹿が舞台上にいくつか置かれており。

演出はなかなか本格的…。


「きゃあ、可愛い♪」

「煎餅食べてくれた!」

レッドやブルーの子達は女子高生らしく演技していた。


その一方で…、

「おら、食えよ」

置物の鹿の口に鹿煎餅を力づくで突っ込むアカツキ、ことブラックの九鬼真弓(クキマユミ)。
勿論いつもの金髪ではなく、役柄上、黒髪のカツラをかぶっているのだが、全然役を演じていないうえ、素のままだった。

「だり~ぃ、マジだる。ダルメシアン」

こちらは置物の鹿の上に腰掛けている白石さん、ことグリーンの蒔絵(マキエ)ちゃん。


…って、それ鹿だからね?

脇で控えながら、果てしなく不安になってきた。


「きゃぁぁぁぁ!!」

悲鳴をあげ、へたりこむブルー。

「どうしたの?夏希」

走り寄るレッド。

「…鹿のフンが」

震えた声で言う。

「何言ってんの?鹿だってね~クソぐらいするわよ。鹿だもの」

…人間だもの、みたいに言うな。

こいつらもアドリブ?と思って台本をめくってみると、確かにそのセリフが書かれてあった。

――この脚本、大丈夫か?!


「きゃぁぁ!フンがだんだん大きく~」

「嘘ぉぉぉ?!」

「嫌ぁぁぁ!!」

この辺だけは無駄に迫真の演技だ。


ここで、おどろおどろしい感じの音楽が流れ始める。

スタンバってた敵役が俺の居る反対側の舞台袖から登場。


「我が名は魔神鹿のフン」

やたらとリアルに作られた巨大な鹿のフンの被り物をかぶっていた。

(おい~!子供も見てんだぞ!!)

大道具だか小道具だか知らないが、いらぬところで凝りすぎだ。