笑顔で敬礼した姿勢のままの相手を、俺達は胡乱気な眼差しで見つめた。
「…いや。
呼ばねぇし」
「というか、なんで俺達の名前を知ってるんだ」
「…そりゃもう。
興味津々の対象ですから。
――ツキを持つ者、とそれを守る者なんて」
彼女は頬に手を当て、恍惚とする。
「……何だって」
俺は一気に緊張を走らせた。
俺達のことを何も知らずに生きる普通の人間がそんなことを言うわけない。
「強運を持つ女子高生。
大いに私の興味をくすぐる対象。
これはじかに調べてみませんと」
そう言うと彼女は白衣の内ポケットから光る細長い何かを取りだした。
鋭利な針のように見えるそれを指の間に挟んで構える。
「というわけで実物を頂きに参りました」
にやっと、世紀の大泥棒みたく不敵に微笑む。
「……な」
俺は身構えた。
「そんなに怖がること無いですよ。
ちょぉっとチクッとするだけですからねー」
そう言って、彼女は指に挟んだそれを一斉に明月に向かって放った。
「――伏せろ!」
俺はベッドから跳ね上がり、アカツキに覆いかぶさる形で共にベッド脇へ倒れ込んだ。
その拍子に、アカツキの座っていたパイプ椅子もガタタタンと派手な音を立てて床に倒れた。
「……つっ…」
体を起こして視線を上向けると、そこには、壁にびーんと針が三本、深々と刺さっていた。
冷たい汗がこめかみから流れる。
(……どこが、チクッと、だ。
グッサリの間違いだろ)
「いつまで人の上に乗ってるつもりだ?」
状況が見えてないアカツキが俺の下から唸る。
「あ、わりい…」
謝って退くと、アカツキは立ち上がり、いきなり相手に向かい合った。
「…お、おい。アカツキ」
「こいつの目的はあたしだろ。
だったら、この手でぶちのめすまでだ」
そう言って、拳を鳴らす。
「いや、ちょっと待てって」
到底、素手で敵う相手ではない。
猪突猛進にも程がある。
ちょっとは考えるか悩むかぐらいしろ。

