至近距離で上目遣いで俺の顔を覗き込んでくる。
それだけで心臓が大きく跳ねた。
「ちょっ…」
逃れるように腕を引こうとしたが
相手の腕がかなり頑丈に絡まっていてほどけない。
「デートは男の人のほうがエスコートするものよ」
試すかのような嘲笑うかのような声で言ってくる。
変な汗がじわじわ出てきた。
…この状態で並んで歩けと言うのか。
どきまぎしていると、今度は腕に柔らかいものが押し付けられてきた。
むぎゅっという感触に思わずぎくりとする。
「…セイラ」
「へ?」
声が上ずる。
「今日は私のことを”セイラ”って呼んで」
いきなり何を言い出すんだ、と思った。
だが戸惑っている間にも、むぎゅぎゅっと弾力あるものが強く押し付けられてくる。
「呼ぶくらい、何てこと無いでしょ?」
せっつくように言う。
…ああ、クソ。
何だってそんな事をしなくちゃいけないんだ。
しかし頭がくらくらする。
容赦ないボディタッチ攻撃は精神的に非常にきつい、ってか苦しい。
降参するしかなかった。
「…セ、セイラ…さん」
「ちゃんとセイラって呼んで」
「…セ……セイラ…」
恥ずかしく情けない気持ちを押し込めながら言った。

