彼女は、駅前の噴水の池縁に腰かけていた。
髪は緩くみつあみで一つにまとめており、紺色のノースリーブのワンピースに白いカーディガンをプロデューサー巻きしており、彼女自身の繊細な容貌と相まって、まるで清楚系のお嬢様でとても絵になる光景だった。
だがよくよく見ると、何かちょっと様子が変だった。
白石さんは、きらりと赤い輝きの放つ石のようなものを指に摘まんで翳し、それを透かして空を眺めているようだった。
しかし、いつまでもその様子を眺めている訳にもいかないので、俺は彼女の方へと近づいて行った。
すると白石さんは俺の気配を察したのか、俺が傍に来る前に立ち上がった。
「待ち合わせの10分前に来るとは感心ね」
翳していたものをポケットへとしまいながら言った。
「あんたの方こそ早くに来てたんだな」
「勿論よ。楽しみにしてたんだから」
…さよか。
俺はさらさら楽しみにしていなかったけどな。
「…で、さっきは何してたんだ?」
ちょっと気になって訊いてみた。
「何が?」
「何か翳して、空を見てただろ」
すると白石さんは「ああ」と頷いて、もう一度空を見上げた。
「――星を見てたのよ」
「…星?」
俺は彼女の見ている方を見上げた。
そこには眩しいほどの青い空があるばかりだった。
「星なんて見えないんだけど…」
「見えなくても、昼間にも星は出てるわ。
シュンももっとそういうことに気付くべきね」
彼女は少し遠い目をして呟いた。
その表情はなぜか妙に大人びていて、俺は少しどきりとした。
「……何言って…」
「ふふ。なぁんて冗談よ」
そう言って俺の方を見て微笑む白石さんはいつも通りの白石さんだった。
「行きましょうか?」
彼女は手を差し出して言ってきた。
これはすなわち手を繋げということなのか。
俺はどう対応すべきか戸惑い、はぐらかすように手近な質問を口にした。
「…ていうか、どこに行くつもりなんだ?」
「…そうねぇ」
彼女は考えるように視線を宙へ巡らせた。
「あそこの6階で映画でも見ない?」
駅のすぐ前のデパートを指差し言った。

