妹は逡巡するように、視線をさ迷わせた。
けれど迷いを断ちきるようにひとつ息を吐くと、

「…うん。行くよ」

強い調子で答えた。まるで自分にそう言い聞かせるように。

「そう」

姉は溜息とともに頷いた。

「分かったわ。引き留めたってあなたは行くんでしょう」

妹は何も言わず、すまなさそうに小さく微笑んだ。

「……ごめんね」

「謝らなくてもいいのよ。
……セイラ。手を出して」

「……?」

妹は疑問符を浮かべながらも手を差し出した。

姉はそっとその上に何かを乗せた。

「……これは…」

「私達、これでよく遊んだから。
セイラが持っていって」

「……でも…」

それは赤く透き通った小さなサイコロだった。

二人で遊ぶ時、何かを決める時には必ず使ってきたものだった。

「 いつかこれを持って私の居るところに戻ってきて。これはそのための約束よ」

「……お姉ちゃん…」

妹は沸き上がる感情を必死に押さえた。
ここで泣いてはいけないと、強く自分を戒めた。

涙をこらえ、必死に精一杯の笑顔を作って見せた。


「約束するよ、お姉ちゃん」


最後に妹は笑顔でそう約束した。



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