その問いかけに、蓮は生地を焼く手をいったん止めた。
「…それは俺に聞くより、自分で確認した方がよう分かるんちゃうん?
――ツキヨミの巫女さんよ」
その言葉に、星羅はハッと息を呑んだ。
そして蓮の方を睨むように見た。
「……私にその力が無いことは、あなたの承知の通りよ」
「…ほんまにそうなんかな…?」
蓮は試すような目つきで問いかける。
「確かに周りの人間は皆、あんたには月読みの巫女としての力は無いっていう認識やけど…。
でも、ほんまは違うんやろ?」
「何が言いたいの?」
「はぐらかすつもりなら、ここではっきり説明したるわ」
蓮は頭に巻いたタオルを取り、店から出て、ベンチに座る星羅の隣にどっかと腰を下ろした。
「――星羅ちゃん。
あんた、今は白石家の養女やけど、元々は水波(ミツハ)という家の生まれや」
星羅は何も言わない。
蓮は気にせず、淡々と話を続ける。
「水波(ミツハ)家は特別な血を受け継ぐ家系や。
なぜなら、その一族の中で生まれてくる双子は不思議な力をもって生まれてくると言われとるからや。
そして双子が生まれてきた場合、一人は"福宿し"、もう一人は"月読み"と呼ばれ、
"福宿し"はたぐいまれなる強運を持ち、"月読み"は福宿しの持つ運の流れを読みとる力を持っとると言われてる。
まさしく二人で一つといった具合にな。
そしてセイラちゃんは、水波家の双子の妹として生まれた。
お姉さんは福宿しの巫女、セイラちゃんは月読みの巫女として、な」

