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「……アカツキ」
呟きながら硬いベッドの上で目を醒ました。
「なんだ?」
上からぬっと顔を覗きこんできたのはアカツキだった。
「うわっ」
驚いてベッドの上で仰け反った。
するとアカツキは顔を顰めた。
「何だその反応は。
せっかく人が保健室まで運んでやったというのに」
「……あ」
ふと周囲を見回す。
この鼻につんとつく薬品の匂い。
そうか、ここは保健室か。
「お前が運んでくれたのか」
「てめぇが間抜けにテニスボールに当たって気絶しやがったからな」
「……そ、それは飛んで来たんだから仕方ないだろ」
「私のように避けろ」
「お前は単に運が良かっただけだろ!」
ったく。ラッキーな奴は良いよな。
俺の普段の不幸度を考えるに、俺の運はアカツキに絞り取られてるんじゃないだろうか、とふと思ってしまう。
「そういえばあれは何だ?
やたらめったら重かったぞ」
アカツキはベッドの傍に立て掛けてある竹刀袋を指差して言う。
どうやら俺と一緒にそれも運んできてくれたらしかった。
「…あー。
…あれは……」
参ったな。
どう説明すればいいのだろう。
思い悩んでいたその時、ベッドの間仕切りカーテンが開いた。
「やや。
お目覚めですか、少年」
そこには制服の上から白衣を羽織った少女が居た。
黒の前髪に一筋だけ入った金色のメッシュが特徴的だ。
「……えと、誰ですか?」
「保健医の先生でっす!」
「嘘つくな」
どこをどう見ても同年代の女子だ。
「む。嘘じゃありませんよう」
可愛くむくれて見せる少女。
「まぁいいでしょう」
そう言って少女は俺達の方を見て微笑んだ。
「はじめまして。
月村明月さん。守谷俊君。
私は日暮夕月(ヒグラシユヅキ)
気軽に夕月ちゃんとお呼びください!」

