俺はぼんやりと保険医の立ち去った方を見ていた。
「なぁ。奴は何者で何を知っているんだ?」
「…知るか。私に聞くな」
アカツキはベッド脇のパイプ椅子に座りながら、にべもなく答えた。
「前は襲ってきたかと思えば、今回は鳥を渡してきて…って」
はっとその存在を思い出してアカツキの方を見た。
鳴き声も何もしないのですっかり忘れていた。
見ると、九官鳥はアカツキの肩から頭の上へと移動していた。
「…ぶふっ」
思わず噴き出してしまった。
仏頂面のアカツキと頭の上に乗った九官鳥の組み合わせはなかなか破壊力があった。
「めっちゃ懐かれてんじゃん。ぶふははははっ…ぐふっ」
最後に顔面に何かを押しつけられた。
「……笑いすぎだろ、てめぇ」
「アホ死ネクズ!!」
存在感を消していた九官鳥もやっと喋った。というか喚いた。
「すまん………って、何これ」
顔に押し付けられたものを手に取り、首を傾げた。
それは可愛くラッピングされた小さな箱だった。
俺は思わずアカツキの方を見た。
アカツキは腕組みした姿勢のまま、ふいっと顔だけ横向けた。
「…まさかお前。
自分で今日が何の日か忘れてるんじゃねーだろな」

