「…あなたがいくら月村さんのことを大切に思っていても、あなたが月村さんのためにできることには限界があります。
だから頼るべきものがあるときは頼ってもいいんじゃないですか?」
「……何言って…」
言葉の意図が分からず、戸惑った。
彼女はそんな俺を見て、優しい表情になって続けた。
「誰かを守る前に自分を大切に思ってもいいんです。
守谷君。あなたも今、自分のことを見直す時間が必要なんじゃありませんか?」
「……それはどういう…」
「最近、何かを思い出しかけてるんじゃありませんか?」
「………」
何も知らないはずの相手に、自分のことを言い当てられ、俺は少しぎくりとした。
「……あんた…何か知っているのか?」
すると彼女は微笑んだ。
「あなたの求める答えはあなたの中にあります」
それだけ答えた。
そしてそれ以上は言おうとしない。
答えは自分で探せと言うことか。
「月村さん。お邪魔しましたね。
あとはお二人でごゆっくりどうぞ」
アカツキに微笑みかけ、開いたままのカーテンに手を掛けた。
どうやらあっさり立ち去るつもりらしい。
そのまま出ていくのかと思いきや、俺のほうを振り返って言った。
「ああ、そうそう。守谷君。
答えを知りたければ、まず、あなたの持つあの刀と向き合ってみることです」
意味深な言葉だけを残し、保健室から出ていった。

