背後を振り返ると、そこにアカツキがいた。
考え事していたせいで、気づけなかった。
彼女の険悪な視線とぶつかる。
が、彼女の視線は俺の目を通り過ぎ背後へと移動。
肩に提げている木刀の入った袋の方へと。
「…そっか」
と何か得心がいったように頷く。
「お前、剣道部の入部見学に来たんだな」
「…は?」
「ちょうど良かった!
実は今、男子の方は深刻な部員不足でな…」
話が間違った方向に進んでいる…。
瞬時にそのことを察知した俺は、すぐにエスケープの体勢へと…。
ダンッ!!!
自販機の前で彼女の腕によって、行く手をふさがれる。
「逃がさねぇぞ、コラ」
…脅し?!
俺は自販機を背にして完全に追い詰められていた。
…何、この体勢。
ゴトンッ
自販機の取り出し口から缶が滑り落ちてきた。
どうやらアカツキが俺を阻む際に、その手を置いた位置がちょうど自販機のボタンの上で。
中には釣銭の取り忘れがそのまま残っていて。
しかし彼女の幸運はそれだけに留まらなかった。
くるくるとルーレットが廻り始め、「大当たり」が点滅。
もう一本追加の缶が再び取り出し口に落ちてきた。
「おっラッキー」
アカツキはそれが自らの幸運のせいだとは露知らず、普通に嬉しそうに喜んだ。

