「…ちっ」
逃がしてしまった。
「シュン。そっちより爆弾だ!時間がねぇ!」
アカツキが叫んだ。
「あっ」
俺は慌てて引き返して、ベンチの下にある筐体を覗く。
「あと20秒?!」
やややややばい…。
「おい、どうすんだっ」
「……くっ」
俺は取りあえず、ベンチの下のその明滅する筐体を掴み、周囲を見回す。
「海に投げるしかなさそうだな」
しかし、片手で掴めるサイズのわりに意外と重い。これ。
爆発の威力はどれほどか分からないが、船を巻き込まない距離まで投げ込めるか否か。
辺りを見回す。
ベンチの上に誰かが仕舞い忘れたのか、ラケットが置きっぱなしだった。
「…くそっ」
いちかばちか。
俺はラケットを手に取る。
タイマーは5秒を切っていた。
「――シュンッ!!」
「…やるっきゃねぇ!!」
爆弾を高く放り上げる。
重量の重い爆弾はものすごく速い落下スピードで落ちてくる――と思いきや。
ぶわっと。
俺を中心として、摩訶不思議な風が巻き起こり、落ちてくる爆弾の落下スピードが緩やかになった、気がした。
(――いける)
なぜかそう思えた。
助走をつけて飛び上がった体も、ふわりとなぜか羽が生えたように軽い。
その跳躍の最高到達点にて、大きく降りかぶったラケットで、スローモーションに落ちてくる筐体を思いっきり叩いた。
――バシュッッッ!!!
その激しい打撃にラケットのガットは勢いよく破れたが、
筐体はまるで暴風に押し出されたかのようにありえない速度で船を飛びだし、海へ向かって落ちて行く隕石のように衝撃波さえも纏いながら飛んでいく。
そしてついに、
――ドオォォォォン!!!
船を微かに揺さぶる爆破音と。
暗闇の海上に開く、閃光と火炎の花。
潮風がきな臭い薫りを孕んだ熱風を運ぶ。
海に投げ込まれた筐体はその華々しい威力をもって、本当に爆発物であったことを証明した。
そしてその脅威から船を守ることはできた――ようだった。

