「シュン!
そいつの言うことを聞くんじゃねぇ!」
アカツキの声に俺はハッと現実に戻った。
(今のは一体…)
何だったんだろう…。
「耳を貸すな。
この船員みたいに操られちまうぞ!」
「……ちっ
小娘が余計なことを…」
舌打ちする相手はアカツキの方に気を取られたのか、首を縛める鎖が緩んだ。
俺はその隙を逃さなかった。
(……今だ)
俺は両手で首に巻き付いた鎖を掴んだまま、身を少し屈めた。
そして後ろに向けて脚を蹴り上げ、背後に立つ相手の脚を薙ぎ払う。
ふわりと宙に浮く相手の身体。
背負い投げの要領で投げ飛ばし、そいつの身体を地面に沈めた。
相手の腕を取り、起き上がらないように抑えつける。
形勢逆転。
後ろに立たれていたのでずっと相手の姿を見れなかったが、こうして目の前にしてもそいつの容貌はよく分からなかった。
周囲の闇に同化するような真っ黒な装束に身を包み、ほとんど目だけしか表に出ていない。
そういえばアカツキが叫ばなかったら背後に近づいていたのを気付かなかったぐらい、完全に気配を消して闇に紛れていたし…。
(……こいつ、何者だ?)
俺は相手を見下ろしながら問い掛ける。
「――お前は誰だ?」

