「今日怪我したって柊哉から聞いた。その、同級生がほんとに悪い」
「やっぱり兄弟ですね。柊哉くんはもちろん、智哉先輩だって悪くないですよ」
謝らないで下さいと伝えると、そうかと言ったきりまた間が空く
普段電話で智哉先輩と話すことなんてないから不思議な感じがする
「寝る前にひとつ、これだけは伝えておきたい」
「なんですか?」
「桜、好きだ。俺と付き合おう」
「......」
まさか1日に2回、しかも今度は智哉先輩に告白されるなんて想像すらしていなかった
開いた口が塞がらないとはまさにこのこと
「いつまでも待ってる。おやすみ、桜」
「はっ、はい!おやすみなさい智哉先輩」
切る前に先輩が笑った気配がした気がした
だけどもう私の頭はショート寸前
だってまだ好きとか付き合うとか良くわからないのに交際を申し込まれたから
相談できるのは美里ちゃんくらい
この時間だとまだ彼女は起きてる頃だと思いきって電話をかける
「ゆーうり!電話なんて珍しいね?どしたの?なにかかあった?」
「あのね、──」
体育祭での出来事と柊哉くんと智哉先輩に好意を持たれていたことを伝える
「許せない!侑里に怪我を負わせるなんて!でも、2人ともついに告ったんだね?で、侑里は今好きな人とかいないの?」
「大丈夫だよ。好きな人はいないかな」
「きゃー、だったら2人のうちどっちかを選ばなきゃだよ!どっちも振るって選択しもあるけどね!」
いやー、青春だ青春だと電話の向こうで美里ちゃんがはしゃいでいる
そうだよね、まずは2人に向き合ってちゃんと彼らのことを知らなくちゃ
でないとなにも始まらない
「美里ちゃん、私好きを知りたい」
そう伝えると、応援してるねと言ってくれた
おやすみを言い合った後に布団へ潜り、まだ見ぬ恋へ想いを馳せて眠りについた
───完